外国人を受け入れる制度として「特定技能」と「技能実習」がありますが、何が違うのかよくわからない方も多いでしょう。特に技能実習3号は、5年間の日本滞在が可能。特定技能1号に移行すべきか技能実習3号としてそのまま受け入れるのか迷うところでもあるでしょう。
そこで今回は、特定技能と技能実習3号との違いを徹底解説。それぞれのメリットやデメリット、切り替え方法や注意点なども紹介します。読めば2種の違いがわかり、切り替え時の不安が解消されますよ。
目次
そもそも技能実習3号とは?受入れ条件や方法について解説!
技能実習という在留資格は、技能実習1号から始まります。その後一定の期間就労し、試験をクリアするなど一定の条件を満たすと2号、3号へと移行できます。1年目に1号、2~3年目に2号、4~5年目に3号が取得できます。
技能実習3号取得のために必要な条件は、以下のとおりです。
- 技能実習3号で認められた職種である
- 2号修了後に1ヶ月以上帰国する
- 技能検定3級またはこれに相当する技能実習評価試験の実技試験への合格
- 初めて技能実習3号を取得する
- 優良な実習実施者の要件を満たしていること
- 優良な監理団体の要件を満たしていること
上記の条件を満たした場合は、技能実習3号として受け入れることができます。受入れには在留資格変更許可を申請する必要がありますが、監理団体や受入れ機関など複数の機関が絡み合い、手続きは複雑です。
「特定技能1号」と「技能実習3号」の5つの違い
特定技能1号と技能実習3号は、同じように見えて実は全く違う在留資格です。それぞれの違いを、5つの項目に分けてチェックしてみましょう。
- 制度目的
- 在留期間
- 一時帰国の必要性
- 送り出し機関の有無
- 転職の可否
特定技能での受入れで始めに取得できるのが「特定技能1号」です。制度がまだ新しく2号認定はまだされた方がいないので、「特定技能」といえば1号と考えて良いでしょう。特定技能と技能実習3号には大きく分けて5つの違いがあります。
それぞれの違いについて、詳しく解説します。
【1】制度目的
「技能実習」と「特定技能」は、就労可能な在留資格として混同されがちですが、そもそも目的が違います。
技能実習は、先進国の日本が持っている技術や知識を発展途上国へと移転し、人づくりに協力することが目的。特定技能は、即戦力となる外国人を雇用することで日本の人手不足を解消するために作られた制度です。
受け入れ側としては働いてもらうことに変わりはないのですが、もともと作られた目的が違うので内容も異なります。例えば就業できる職種もそのひとつ。国際貢献のための技能実習では認められない職種も、人手不足の解消のための特定技能では認められるものがあります。
受入れ機関は、どのような目的で外国人を雇用するのか一度考えてみると良いでしょう。
【2】在留期間
技能実習と特定技能では、在留期間に違いがあります。技能実習と特定技能で認められる在留期間は、以下のとおりです。
在留期間 | |
技能実習1号 | 1年以内 |
技能実習2号 | 2年以内 |
技能実習3号 | 2年以内 |
特定技能1号 | 通算5年 |
特定技能2号 | 制限なし |
技能実習3号は2年以内なのに対して、特定技能1号は通算5年の在留期間が与えられます。通算5年というのは、更新するたびに在留期間が与えられ、合算で5年間在留が認められるということ。一度取得してしまえば中長期の安定した雇用ができます。
また、特定技能で2号を取得できれば制限なしで在留が可能です。特定技能2号を取得できるのは2021年12月現在、建設と造船・舶用工業のみ。しかし今後農業や宿泊業、飲食料品製造業、外食業などでも2号を取得できるように政府が検討中です。
【3】一時帰国の必要性
技能実習生は、日本で身に付けた知識や技術を母国に持ち帰るために、一時帰国をしなければなりません。帰国のタイミングは、技能実習2号が修了して技能実習3号を開始する前。技能実習生は、1ヶ月以上本国に帰国することが義務付けられています。
なお、令和元年9月からは、技能実習3号開始1年後以内に1ヶ月以上帰国すれば良いこととなりました。
一方特定技能には一時帰国は必要ありません。技能実習から特定技能に移行する場合も、技能実習2号を良好に修了している外国人は一時帰国をせずに更新が可能です。ただ、技能実習の期限が切れてしまった場合は、一旦帰国しなければならないので注意が必要です。
やはり、一時帰国の必要性がなく即戦力になるのは特定技能といえるでしょう。
【4】送り出し機関の有無
技能実習では送り出し機関の利用が必須ですが、特定技能では国によって利用が必須かどうかが決められています。例えばタイでは送り出し機関の利用は任意ですが、カンボジアでは政府に認定された送り出し機関を通してのみ特定技能の受入れが可能です。
国によってルールが異なるため、締結国の最新の情報をチェックしておきましょう。また、技能実習制度は送り出し機関だけでなくたくさんの機関が関与することによって成立しています。技能実習と特定技能それぞれで関係する機関は、以下のようなものです。
【技能実習】
- 送り出し機関
- 監理団体
- 雇用主
- 労働者
【特定技能】
- 雇用主
- 登録支援機関
- 労働者
特定技能の方が関係する機関が少ないため、手続きもシンプルになっています。また、受入れ企業は労働者を直接雇用することができるので、やりとりがしやすいのが特徴です。
【5】転職の可否
技能実習の場合は、基本的には転職は認められていません。所属している企業が倒産した場合と技能実習2号から3号に移行するタイミングでのみ転職が可能です。しかし実習が目的の技能実習生には、転職を考えている方は少ないでしょう。
なお、コロナウイルスの感染拡大により帰国が困難になった技能実習生は、特定活動の資格に切り替えることで転職が可能になっています。しかし、この特定活動の在留資格はコロナ渦のみの一時的なもので、いつなくなってしまうか分かりません。
一方就労が目的の特定技能は、同業種ならいつでも転職が可能。受入れ企業は、特定技能外国人が転職を考えなくなるように、常に居心地の良い環境を作っておく必要があります。労働条件などを整えて、いつまでも働きたくなる企業を目指しましょう。
「特定技能1号」と「技能実習3号」のメリット・デメリットとは?
特定技能1号と技能実習3号には、それぞれ良い面と悪い面があります。それぞれのメリットとデメリットをチェックしておきましょう。
- 特定技能1号のメリット・デメリット
- 技能実習3号のメリット・デメリット
それぞれの特徴を比較することで、どちらの受け入れをするべきか判断できるはず。「そろそろ技能実習2号を修了する実習生がいるけれど、特定技能に切り替えるか技能実習3号を取得するか迷っている」という方は、参考にしてみてくださいね。
それぞれのメリットとデメリットについて、詳しく解説します。
特定技能1号のメリット・デメリット
特定技能1号のメリットは、以下のようなものです。
- 受入れ人数に制限がない
- 外部コストが低い
- 事務作業が簡素
- 即戦力となる人材を確保できる
- 人材の自由度が高いので仕事へのモチベーションアップにつながる
- 労働力として考えてOK
特定技能1号にはたくさんのメリットがありますが、中でも大きな違いは単純作業ができること。特定技能は労働力と考えて良いので、単純作業をさせても問題ありません。一方、特定技能のデメリットとして以下のようなものが挙げられます。
- 人材確保が難しい
- 賃金が高い
- 転職が可能
特定技能は人材の確保が難しいですが、技能実習生から移行できる方を見つける方法もあります。ただ、賃金は日本人と同等で転職の可能性もあるので、受入れにはある程度の覚悟が必要です。
技能実習3号のメリット・デメリット
技能実習3号のメリットは、以下のようなものです。
- 人材確保が比較的容易
- 転職のリスクがない
- 低賃金で雇用可能
技能実習生は送り出し機関を通すため、人材が比較的簡単に見つかります。転職のリスクが少なく、低賃金での雇用ができるのが受け入れ側のメリットといえるでしょう。一方デメリットには以下のようなものが挙げられます。
- 受入れ人数に制限がある
- 外部コストが高い
- 事務作業が煩雑
- 単純作業ばかりさせてはいけない
技能実習生は、特定技能と違って労働力とかんがえてはいけません。あくまで国際貢献のための実習をしている外国人なので、教育を重視する必要があります。そのため賃金は安くて済みますが、単純作業ばかりをさせることは認められません。
技能実習から特定技能1号への切り替え方法は?
特定技能1号で受け入れるメリットが分かったところで、次は在留資格の切り替え方法について知りたいと考える方も多いでしょう。技能実習から特定技能への切り替え方法について、以下の2つのポイントをチェックしておきましょう。
- 期間は3~4か月ほどかかる!
- 準備書類は?入管HPをチェック
特定技能への移行はメリットが大きいですが、準備に時間がかかるのも事実。よく確認しておき、スムーズに切り替えができるようにしましょう。それぞれのポイントについて、詳しく解説します。
期間は3~4か月ほどかかる!早めに準備しよう!
特定技能の取得までには、およそ3~4ヶ月ほどかかります。書類準備に1ヶ月以上、
審査に約2ヶ月、許可がおりて配属されるまでに約1ヶ月ほどかかるのが目安。もし人材の募集から始めるなら、半年ほどかかります。
特定技能への切り替えには案外時間がかかるものなので、採用が決まったら、すぐに準備に取り掛かりましょう。慣れていないと容量が分からず、手続きに戸惑ってしまうこともあるので、多くの受け入れ企業は登録支援機関を使って業務を楽にしています。
初めて特定技能を取得する場合は、登録支援機関に業務を委託することを考えてみましょう。特定技能の受け入れ実績が豊富なKMTでも、受入れのサポートができますので、ぜひ一度ご相談ください。
準備書類は?入管のHPをチェックしよう
受入れが決まったら、まずは書類の準備に取り掛かりましょう。用意する書類は、出入国在留管理丁(入管)のホームページからチェックできます。「在留資格変更許可申請」を行うための手続き内容を確認しましょう。
技能実習からの移行の場合は、特定技能の実技試験と日本語試験は免除されます。しかし、「その分野に関する技能実習評価試験の合格証明書の写し」か「技能実習生に関する評価調書」のいずれかが必要です。
また、特定技能の受け入れ機関は受け入れ日から4ヶ月以内に協議会に入会する必要があります。協議会の構成員であることの証明書が必要になるので、なるべく早く加入しておきましょう。
また、分野によって用意すべき書類が違うものもあるので、各分野の必要書類を確認しておきましょう。
技能実習2号or3号から特定技能1号への切り替え時の注意点
技能実習2号や3号を終えて特定技能1号に切り替えるときに、注意しなければならないことがあります。注意すベきポイントは、以下の3つです。
- 業務/作業が一致しているか?
- 保険料などの未払いがないか?
- 在留期限が大きく異なることも
受け入れ時に確認すべきポイントを確認し、スムーズな受け入れを目指しましょう。それぞれの注意点について、詳しく解説します。
移行後の業務/作業が一致しているか?
技能実習から特定技能に切り替える場合は、同じ業務・作業でなければなりません。違う業務に従事する場合は、新規で特定技能を申請することになります。新規で申請を行う場合は日本語試験や技能試験など、切り替えなら免除になるはずの試験に合格しなければなりません。
どの職種・作業がどの分野に該当するのかは、法務省のホームページからチェックできます。特定技能移行後の業務が技能実習のときと一致していることを確認しておきましょう。
介護やビルクリーニングなどは作業が1つしかないので、同職種なら一致するでしょう。しかし、製造業などの技能実習は「鋳造」「塗装」「溶接」など様々な職種があり、さらに作業も細かく分かれています。
それぞれの作業に一致する特定技能の業種と業務区分をチェックし、同じものに切り替えることが大切です。
住民税や健康保険料、年金保険料の未払いがないか?
一定の条件のある企業で働く特定技能の外国人は、社会保険料を支払う義務があります。農林漁業・サービス業で、従業員が常時5人以下の個人の事業所以外は、受入れ機関は特定技能外国人に社会保険料に加入させなければなりません。
住民税や健康保険料、年金保険料は実習生のときから支払っているはずですが、未払いがないことを確認しておくことが大切です。未払いがあると、申請のときに審査にひっかかってしまうこともあります。
もし未払いのものがあった場合はどうして未払いになっているのか、申請前に理由を入管に説明しておくと良いでしょう。同時に、各種届出の義務も怠っていないかチェックしておくと、審査に通りやすくなります。
在留期限と実習修了日が大きく異なることがあるので注意
技能実習からの切り替えで注意しなければならないのが、在留期限と実習修了日の関係です。在留期限は日本に滞在が認められている期間。実習修了日は実習としての就業が終了する日ですが、在留期限と同じではありません。
例えば、在留期限は1月10日までなのに実習修了日は11月10日のこともあります。この場合、11月11日には特定技能1号としての許可をもらうことが可能です。実習修了日以降は就業が不可なので、特定技能の許可がおりるまでは働くことができません。
ブランク期間を出さないためにも、採用が決定したらすぐに実習修了日がいつなのかチェックしておくことが大切。早めに切り替えの準備を始め、実習修了日の次の日からはなるべく早く更新ができるようにしましょう。
まとめ|自由度の高い特定技能への切り替えはお早めに!
特定技能への切り替えは、技能実習を続けるよりも大きなメリットがあります。
一度受け入れてしまえば手続きがシンプルになるなどたくさんの魅力がありますが、日本人と同等の扱いで外国人を雇えることが最も大きなメリット。これまでやらせてあげられなかった作業をさせることもでき、外国人のモチベーションも上がります。
1人の有能な労働者として仕事を任せられる特定技能外国人が、職場に欠かせない存在になることは容易に想像できるでしょう。さらに特定技能で2号が取得できたら、永住権への道も開かれます。
ただ、受入れの手続きが大変だと感じる経営者の方も多いでしょう。そんなときには、登録支援機関として登録済みのKMTにお任せください。受入れからその後の支援まで幅広くサポートするので、ぜひご相談をお待ちしています。